探索17日目

暗い床。暗い、天井。 ふっ、と気を抜けば押し潰されそう。 そんな、世界。 今自分達は、地下2階にいる。 と言っても、上り階段のすぐ近くだ。 夕方確認した時には前方に山がそびえていた。 山の横は巨大な壁によって支えられている。 胸を締め付けるような圧迫感。 それもそのはず。山では砂地や平原に比べ、強敵がでる。 ましてやここは地下2階。未知の地。 現在の僕達でどこまで進めるのか。 ここは1度引き返すべきか。 進むにしろ、休憩をとるべきではないか。 ……ついさっきまで、それについて会議が開かれていた。 若輩者の自分はやっぱり視野が狭い。それを思い知るような会議だった。 一応意見は出したものの………皆さんの考えの深さには、ただ感心するばかり。 結論としては、休みを多めにとり様子をみながら進むことになった。 パンサー隊はほぼ完全に回復できるだろう。ありがたい。 ふと、辺りを見る。 周囲にはTriad Chainの他、幾つかのキャンプが見える。 皆あの紅の翼たち、そしてエドという少年を倒したパーティーばかり。 難関を乗り越えたからか、どこか連帯感のようなものを感じる。 そのうえ武具や防具の生産などもあり、自然顔見知りになることも多い。 中でも、キョウコさん達とは何かと縁があった。 実際、今日は手合わせまでしている。 (何故か赤い染み) ……いけない。ちょっと思い出したらこのざまだ。 後日の為、きちんと書いておく。 キョウコさん。真っ直ぐな乙女の心を持つ方。 冒険者としての腕も確かなもの。 短剣の扱い方は見事、敵に回すと恐ろしい。練習試合の中、肌で感じた。 フォウトさんがとても尊敬してらっしゃる方でもある。やはり凄腕なのだろう。 それに関しては幾つか噂があるようだが、想像にすぎない。 キョウコさんはキョウコさん、でいいのじゃないだろうか。 前に作ったエプロンを大切に使って頂いている。嬉しい限りだ。 そのキョウコさんと共に行動されるのは、プリムラさん。 小さいながらも斧使いで、かなりの力をお持ちだ。 それで……その、もちろん、可愛い方。 いや、そうじゃなくて……なんだ。 意外に軽い……ああ、ちがう。 (赤い斑点がぽつぽつ) とにかく!色々書いておかないと。 実はキョウコさん達とは、手合わせをした後に再び出会ったんだ。 それは砂地を抜け、地下2階へと続く階段を見つけた後のこと。 この日一番余裕のあったパンサー隊が最後尾として、階段を下りてゆく。 退路を確保するのは兵法の常道。先人の言葉だ。 初めて体験する、更なる地下への道。僅かに湾曲し、先が見えない。 緊張に包まれながらも順調に下ってゆき、1つ目の踊り場へと差しかかった。 そしてここで1度休憩をとることになる。 その時。 何か、音が聞こえた。 僕はエルフの血のせいか、人より耳がいい。 気のせいか人の声にも聞こえた。他冒険者か、それとも……。 遺跡に潜ってから、この時間に敵と遭遇したことはない。 しかしとりあえず動いた方がいい、との予感がした。 傷を幾つか受けていたフォウトさんに任せるわけにもいかない。 フォウトさんとナミサさんに確認すると、来た階段を戻っていった。 そして15分ほど歩いたころだろうか。 そろそろフォウトさんと約束した刻限だ。 …というか、戻る時間を考えれば遅刻する。 これは、と思い身体をひるがえした時。 こつり、と何か軽いものが落ちた音がした。 足を止め耳に神経を集中させる。 小さなものが落ちているのか、微かな音が聞こえる。 そう言えば降りてきた階段は石造りだが、風化が進み脆い部分もあった。 誰かが通っているのだろうか? これは注意した方がいい。 そう思い、足を早めた。 それから間もなく。 ごとっ、と大きな音が聞こえた。 思わず上を見る。 「プリムラちゃん!」 聞き覚えのある声と共に目に入ったのは…階段の崩壊。 そして、砂埃の先にバランスを崩している人影。 「危ない!」 喉から勝手に声がでた。 もう、夢中だった。 何をどうしたかはよく覚えていない。 背中の弓を外したところまでは微かに覚えている。 今から考えると、何とか落下地点は予測できたようだ。 普段弓の練習をしていることが幸いしたのだろうか。 気がつくと、目の前に人影が落ちてきて…… 直後、腕にずしりと衝撃が走った。 結構な体格の持ち主だろうか。修行が思わぬところで役に立った。 …そう思って腕の中を見ると、意外にも女性だった。 ラクダ達との前に手合わせをしたプリムラさんだ。 どうやら、手に持っていた斧が重かったようだ。 かなり失礼なことを思ってしまった。 照れ隠しに怪我が無いか聞いてみる。 しかし、彼女は俯いて答えない。 どこか痛めたのだろうか。それとも、ショックが抜けていないのだろうか。 ここにいる以上、あの門番を破ってきたはず。 しかしこんな可愛い、じゃなくて女性なら恐がっているかもしれない。 努めて冷静を保ち、彼女の反応を待った。 すると。 (ここからところどころに大きな赤い染み) 「……あたってます」 ……? 一瞬、何のことか判らない。 言われてみて、彼女の俯いた視線の先を見た。 (一際大きな赤い染み) な、ななんと。 ぼ、僕の手が………彼女のおっぱ、じゃなかった胸に!!!! ………ここから先は、全く覚えていない。 なんだか「違います」ばかり言い続けていた気がする。 それから、どうしたんだっけ? とりあえず、考えると彼女をおろして離れたんだと思う。 そしてそばにいた人…キョウコさんに弁明したんだろう。 だって、誤解されるかもしれないから! いや、何を、なんて。だからわざとじゃないんだ。 第一、その時は相手が女性だなんて思いもしなかった。 そういわれれば、確かにや………いや、なんでもない。 これは胸の中に刻み込んでおこう。 誰かに勝手に読まれちゃ何言われるかわからないからなぁ。 両親にでも読まれたら、と思うとぞっとする。 その後……気がついたら、再び踊り場にいた。 正確に言うと踊り場の手前だった。 後にはキョウコさんと斧使いの女性、プリムラさん。それにペット達がいた。 一緒に降りたんだろう。何を話したかは全然覚えていない。 とにかく、遠くからパンサー隊のお二人が見えたので声をかけた。 そして…………… いいや、あとのことはまた今度にしよう。 どういうわけか頭がくらくらしてきた。 まさか、血の出しすぎなんだろうか。 フォウトさんから配給されたチョコ、まだあったかな。 あれ、固くてナイフで削るからあまり減らないんだ。 ともあれ……お休み。 明日は盾弓、いいものが作れるといいなぁ…。 (以上、キョウコさん(372) プリムラさん(957) 及びパンサー隊のお二人を拝借しました。  キョウコさんがブログで日記を先行公開されているのを見て、やってしまいました。もっと文才があれば…!  お二人ともレンタル宣言に入っておられて助かりました。  また、一部キョウコさんの日記文を拝借しました。申し訳ありません…!)

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