山行報告書

記録:渡辺綾美

 山域:剣岳チンネ左稜線

 メンバー:恩田(R)渡辺、佐々木、橋本

 日程:7月29日〜8月1日

<7月29日>

23:30八日市国立→3:00頃立山駅

 私はいつもどおり車に乗り込んですぐ寝てしまった。橋本君の功績で北陸道をぶっ飛ばし、4時間未満で立山駅頭着。まだ開いていない駅の入り口でごろ寝。既に数人が転がっていた。

<7月30日>

5:00駅開場→5:15切符販売開始→6:00立山駅発→7:00頃 室堂着 →10:00剱御前 →14:10剱山頂→15:00下山→剱沢TS

 室堂は快晴。すばらしい!使用前の記念写真を大日岳バックに撮影。それから、既に重いのに水をくんでさらに重くなったザックを担いで三ノ窓を目指す。三ノ窓を目指すものの三ノ窓は遠い。睡眠不足からだろうか?いつもと違うしんどさにすっかり参ってしまって、剱御前に着く前に今日のテン場を三ノ窓から剱沢に変更してしまった。  剱御前10時着。日本海が見える。さわやかな風が吹き、荷物を下ろして一息つくとすっかり元気になった。見ると剱沢テント場はすぐ下にあり、今日の行動がそこで終わってしまうのはあまりにもったいない。(ビール飲んでテン場でごろ寝にも心引かれるが…)  作戦会議の結果、まず剱沢でテントを張って余分な荷物を置き、登はん具のみをもって本峰南壁を登り、ついでに明日の三ノ窓へのアプローチルート確認を行うとなった。  さっさとテントを張って剱本峰へ向かう。しかし!やはり体がおかしい…。つらい、苦しい、もうだめだーーーー。で、とうとう前剱に登はん具も放り出して空身で剱に向かうことになった。しんどいときは、空身でもしんどい。あえぎながら剱山頂着。明日のルートを確認したら、少し安心して全員山頂で居眠りを始めてしまった。たっぷり1時間ほど 意識を失い、そろそろ戻ろうといいだしたのは既に午後3時。  テン場について、目の覚める激辛カレーを食べて(マジ辛タイ風レッドカレー)落ち着くと、目の前にそびえる剱岳が夕闇にかげり始めた。学生らしき集団が酒によってか恒例行事かテン場の隅の高台で、吠えている。(何を言っているのか分からないけど、どうも自己紹介をしているらしい。)橋本君がおもむろにビールを持って立ち上がる。「おお!差し入れか、粋なことするねー彼も。」と残りの3人で誉めていたら、単に雪渓に雪を取りに行っただけだった。でも、おかげで冷えたビールにありつけた。

<7月31日>

3:30起床→4:50テント発→6:50剱岳山頂→11:00チンネ 左稜線取付→16:50三ノ窓の頭→20:00熊ノ岩 (ビバーグ)

 本日は、待ちに待った左稜線。日本屈指のアルペンルート。空は快晴、ついでに体調も快晴。昨日の体調不良が嘘のように体が動く。中高年の大集団を追い抜き、剱山頂まで2時間で到着。日本海に浮かぶ能登半島はその向こう側の海まで見え、遙か水平線は空とつながっている。反対側は、正面に鹿島槍その向こうに富士山さらに向こうの山まで見渡せた。剱の山景は片側に海をひかえたせいもあってか、他の山と違う雰囲気を持っている。それとも、「剱」というあこがれがそんな風に感じさせるのか…。  山頂の、「この先行き止まり」の看板を無視して、稜線沿いの踏み後を頼りに三ノ窓に向かう。さて、ここから三ノ窓に4時間もかかるとは、誰も予想していなかった。じっさい踏み後はあるのだが、危険なガレ場を何度も通過し、エイヤッと気合いを入れなければ行けないところも何カ所かあった。(帰宅後、かつてそのルートを通った市岡氏に聞いたところ、そんな危険な印象は残って無く、どうも別にもっといい道があった可能性がある。)  朝四時台に出て取り付きに着いたのは11時。すっかりくたびれてしまったけど、いよいよクライミングだ!気を取り直してアイゼンをつけ、三ノ窓からの雪渓をわたる。通常なら確保無しで行くところ、橋本君がアイゼン歩行初めてということと、佐々木さんが軽量化だといって4本爪の軽アイゼンしか持っていなかったので、ザイルを出して取り付きへ向かった。佐々木さん、滑落――。まぁ、雪は腐っていたので途中で止まったとはいえ、もし、天候不順で寒くてアイスバーンだったら?確保してなかったら?四本爪は軽いけど、自殺行為なのでやめましょう。恩田、橋本パーティ、渡辺、佐々木パーティで登る。

<1ピッチ目>渡辺リード・クラック〜テラス15m

三級のはずなのに、高度感ばっちりで結構緊張。これが剱の三級かと少々びびる。

<2ピッチ目>佐々木リード・凹角〜フェース50m

1ピッチ目と違い快適なクライミング。そうそう、これが三級だと思いながら登る。

<3ピッチ目>渡辺リード・フェース〜バンド・ルンゼ・テラス50m

ルートは簡単。でもあちこちに行かされてロープの流れがどうしても悪くなる。

<4ピッチ目>佐々木リード・フェース20m

ハーケンを見つけられず長いランナウト。そんなときはフレンズが役に立つ、持って行ってよかった。

<5ピッチ目>渡辺リード・草付き

<6・7ピッチ目>フェース

<8・9ピッチ目>ピナクル林立するリッジ

やたらとロープの流れが悪い。ランニングの取り方に工夫が必要。

<10ピッチ目>渡辺リード・フェース〜ハング、ランペ

いよいよ核心。つるべの順番で私がリード、ラッキー。とはいえいきなりド緊張のフェースクライミング。この辺りからやたら視界が広がり景色が良くなる。要するに高度感も増す。しかし、たいていホールドはガバで、ハーケン支点が怖くなければフリーで十分登れる。後は勇気のみ、 しかし、意気地のない私…。これぐらいなら登れると分かっていながら、つま先からこみ上げる恐怖感についA0。核心のハングにはお助けスリング有り。そこを抜けた後も長いフェースが続く。(時々巨大な浮き石有り)持っていたヌンチャクが足りなくなる、かといってランナウトする気にもなれず腰に付いているガチャのありったけをかき集めてラアンニングを取った。

<11〜15ピッチ、終了三ノ窓の頭>フェース〜リッジ

さして難しくなくロープの流れのみ気を使えばよい。しかし、クライマックスよろしく、すばらしい展望が広がる。これぞ、アルパインクライミングの神髄、イメージ通りの風景だ。そもそもこれが味わいたくて、このルートを選んだのだから。  16時50分終了。時間がかかりすぎだ、もっとスマートにスピーディに登らなくてはいけない。

 17:30頃下山開始、できれば剱沢へ戻ろうと思ったが雪渓脇のガレ場を一回の懸垂下降を含めて下り、傾斜が緩くなった辺りから長治郎の雪渓に出て下るうちにすっかり日も落ち、この日は雪渓途中の熊ノ岩でビバーグをすることにした。既に2・3パーティがビバーグしていた。水はたっぷりある。フリーズドライのスパゲティ(無印良品1人前180円)もおいしく、ツエルトをかぶってくつろいでいると、正面の八ツ峰から不意にぽっかり月が現れた。ちょうど目線と同じくらいの高さに浮かんでいる。星もたくさん出ている。  月と星のビバーグ。これもまたおつでいい。

<8月1日>

3:00起床→8:00剱沢テン場→11:30テン場発→14:30室堂→21:30八日市国立着

 朝、雪渓歩きからスタート。すっかり雪も締まって軽アイゼンの佐々木さんも難なく歩行可能。私たちが下るうちにもどんどん下から人が登ってくる。学生と、中高年が中心だ。  長次郎の雪渓から剱沢雪渓へ合流、黙々と雪渓を歩いていたが心は空と同じように雲一つなく晴れ渡っている。谷は雪で埋まっているが両側の山裾はお花畑で、まぶしいくらいの緑の染まっていた。雪渓が切れて、滝が現れた。その滝の流れが次の上ノ廊下計画を思い起こさせる。きっと水は冷たいだろうけど、また新しい山の姿に出会えるに違いない。 8時にはテン場に到着。例のごとく朝から酒盛りが始まった。昨晩食べるはずだったメニューとビールを飲んでほろ酔い気分。雲一つない青空の下、剱をバックにみなさん睡眠。10時にはテン場を出発しようと言っていたのに目が覚めたら10時半だった。  下山途中の雪解け湧水はすごくすごーくおいしかった。  なかなか、幸福感でいっぱいの剱山行だった。