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精神保健福祉協会だより 編集後記 抜粋

 第36号(2009.3.31)

編集後記
◆ この3月の外来診察では、日本のWBC2連覇の話題で結構盛り上がりました。普段、何事にも殆ど興味を示さない人が、この話題では表情がゆるみ、「最後にイチローに神が降りた・・」などと言い、診察室の空気が和むのが不思議でもあり、楽しく感じました。

◆ その一方、H10 年以降、年間3万人以上の方が自殺する事態が進行中です。H19年6月には自殺総合対策大綱が出来ましたが、未だ効果不明です。警察庁は自殺予防の為に、今年から自殺統計を毎月公表していますが、今年1、2月とも前年同期を超えています。H10年(98年)は、山一證券などの経営破綻などを受けて、3月決算期に自殺者が急増し「98年3月ショック」と呼ばれました。昨年のリーマン破綻後の金融危機の深刻化にともなって、H21年3月決算期の自殺者数の増加が懸念されます。

◆ 失業や倒産、多重債務問題等は、自殺の危険を高める社会的要因になります。また多くの自殺者はうつ病等の精神疾患に罹患しており、精神科医療は自殺防止の最後の砦の役割を担っています。この意味で、精神科医療の役割は重要ですが、精神科医療のみでは課題が大きすぎます。また、精神科医不足が深刻で、普段の精神科医療供給体制が危機に瀕しているという実情もあります。

◆ 滋賀県ではH21年4月から新しく精神科救急システムを立ち上げ、精神科救急情報センターがH21年10月から本格稼動する予定です。自殺予防の関連では一般救急との連携が重要になってきます。岩手県の高度救命救急センターの報告によれば、全受診者の9.5%が精神科救急患者で、そのうち45%が自殺企図によるものだそうです。一般に自殺未遂者は自殺のハイリスク者ですので、一般救急搬送後の、有効な精神科的対処が求められます。そういう意味で、H20年度の診療報酬で精神科救急・合併症入院料が創設されましたが、全国で3カ所の病院しか対応出来ていないのが現状です。

◆精神科救急システムは、一般救急との連携、危機介入やケアマネジメントのあり方、精神科医療の総合的な体制整備など、全国的に共通した多くの課題を抱えたままの出発となりそうです。(滋賀県精神神経科診療所協会 上ノ山)




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