関連活動


精神保健福祉協会だより 編集後記 抜粋 第59号(2016.12.31)

◆2016年の流行語大賞は「神ってる」でした。昨年の「トリプルスリー」に続いて、プロ野球に興味ない人にはピンと来ないかも知れません。広島カープが25年ぶりにセリーグ優勝し、新しいヒーローが生まれた時に監督から発せられた言葉です。大リーグの高額年俸を捨てて戻ってきた「男気」の黒田選手、「どの面さげて戻ってきた」新井選手の活躍など話題性が多かったです。プロ野球では日本ハムの大谷選手の「二刀流」という言葉も良く耳にしました。黒田選手が現役最後に投じた一球の相手が大谷選手だったというのも、よくできた物語でした。

◆世界に目を向けると、2016年は思いがけないことが続けておこりました。イギリスがEUを離脱することを決め、アメリカでは大方の予想を覆してトランプ氏が大統領戦を制しました。2016年は世界史的に見て大きな変化の年だったと、後に回顧されることになるかも知れません。世界大戦の反省から生まれたヨーロッパ統合という理念や、国を超えて世界の一体化を進めるグローバリズムという思想が大きく揺れ、自国中心主義の揺り戻しが起きています。トランプ氏の主張には女性蔑視や民族差別が見られ、これが大統領になる人の言葉かと疑問に思えましたが、それが人々の感情に訴えかけたようです。まるで町内のご隠居さんの世間話が、突然国際政治に飛び出して影響力を持った印象です。そのような時代になっていることを多くのマスコミも読めていませんでした。トランプ氏の勝利にはSNS(ソーシャル・ネットワーキング・システム)が大きな役割を果たしたと思われます。

◆「君の名は」という映画が大ヒットしているそうです。恥ずかしながら若者の心に触れようと思って映画館に足を運んでみました。切なく甘いラブストーリーに、民俗学や大災害後の救済や父と子などのテーマが散りばめられたSFファンタジーでした。その上に素晴らしい映像と音楽のコラボがあり、見ごたえのあるエンターテインメントでした。時空を超えた人のつながりを考えさせられましたが、ある程度頭と心を柔らかくしないとついていけないかも知れません。観終わった若者たちが涙しているのを見て、少し取り残された感覚になりました。エンディングロールに作品に関わったたくさんの人たちの名前が流れて、大変な作業だったのだなと改めて感心しました。この映画のヒットも、SNSによる話題の拡散が大きく影響しているようです。

◆高齢ドライバーが係わる死亡事故などが続いたことから、道路交通法がH29年3月から改正されます。75才以上の運転者が、3年ごとの免許更新時あるいは、一定の違反行為をした時は、認知機能検査を受けることになります。そこで認知症のおそれがあるとされた人は、医師による臨時適正検査または診断書の提出を求められ、認知症と診断された場合は免許取り消し処分の対象となります。しかし認知症と危険な運転の因果関係は明らかではないのです。病名で運転能力を判断することは適切ではありません。高齢に伴い認知機能は必然的に低下していきますが、それでも安全に運転しておられる方は沢山います。特に田舎では車を取り上げられると生活が成り立たなくなる人も多いでしょう。認知症を槍玉に挙げる前に、高齢運転者を支援する車の性能を高め、道路交通システムの安全性を高めることを優先する必要があります。

(滋賀県精神科診療所協会 上ノ山)




お問い合わせはこちら!ご連絡は mihikocl@biwako.ne.jp までお願い申し上げます。
(病気・診療に関するお問い合わせにはお応えできません。)
Copyright (c), サイト内の無断複製および引用を禁じます。