苦味について

苦味について


 五味には、それぞれの特色があり、本来持っている性格として、興奮させる作用、抑制させる作用がありますので、現在の身体の調子と生まれながらの体質は良く知っておく必要があります。これが養生の基本になるのです。

 苦味とは、性質から考えると抑制作用の代表的なものになります。古典には、慎める、固める、泄らすなどの作用があると書かれています。心だけに効くのではなく、各臓にも効用があります。ただ、特に心に大きな影響を与えることから心の項目に入っているのです。心は陽気が集まる臓で、いつも熱性で活動的です。特に、夏になる頃は、外界の気温も上昇しますので、活動する身体の熱と重なることにより、熱が体内にこもります。このようなとき、この熱を引き下げるのに苦味の持つ鎮静、抑制作用を利用すると良いのです。心臓が膨張することも予防してくれるのです。高血圧症、動脈硬化症、など心臓に負担がかかっている症状の方は、苦味の食物が適しています。苦味の食物は、若葉の緑黄色野菜があります。一般的に有名なアロエは、苦味が多く含まれていますし、最近話題にもなった野菜ジュースにも苦味があります。しかし、本当にこの苦味を必要とする人はあまり好きではないようです。冷え症、風邪をよくひく人、貧血症状の女性が美容食として、生野菜を多く食べていることがありますが、この考え方から言いますと余計に身体を冷やしてしまうので、気をつけて下さい。

 身体の中には、熱を持ちやすい部位と冷えやすい部位があります。胃はその最も代表的なところです。胃は水が貯まっているときは、苦味で血管を引き締め、血流をよくするために漢方では使われます。この胃の水が多くなるのは、ただ水の飲み過ぎではなく、水を処理する腎の働きからの影響が多くあります。この点については、少し難しくなりますので、各論において説明させていただきたいと思います。また、腎の性格として、程良く堅くなっていることがよいと以前説明しました。苦味は、腎を引き締める効果もあり、別の場所で活躍しているのです。

 苦味は、緑黄色野菜に多いと説明しましたが、他に古典では麦やラッキョウなどがよいと説明されています。そういえば子供の頃、よく夏の暑い時期に、生に近いガリガリのラッキョウを食べた経験を思い出しました。高血圧症の方は、養生法に応用して下さい。また、冷え症の方は食べ過ぎないように気をつけて下さい。


鈴木治療院
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