甘味について

甘味について


 「甘味は胃(脾)に働き、肉に走る」と古典に書かれています。五臓の作用で説明させていただきましたが、甘味は緩める作用があります。そして甘味の食べ過ぎは肥ることから「肉に走る」と書かれました。今から3500年前には、肥満の原因がわかっていたと言うことです。「胃に働き」とは、胃腸が活発に動くと陽気(エネルギー)の製造が活発に働くことにより、陽気が増え、心の方からも胃に血が送られることにより、胃や身体が元気に機能してくれるようになることから、このように書かれています。この陽気は血のことでもありますが、この血の主原料は水でもあります。この主原料である水の管理は腎でしていますから、腎がどれだけ大切な臓かわかっていただけると思います。

 肝や肺は、陽気と陰気の働きについて説明させていただきましたが、胃の働きは皮膚、肌肉、骨格などに直接働くということが特徴です。例えば、寒いから窓を閉めようとする作用は陰気の働きです。暑くなってきたから汗を出し、窓を開けようとする作用は陽気の働きです。この窓が正常ならいいのですが、もし故障しているときに直してくれるのが、甘味の働きなのです。内臓や骨に甘味は影響しているのです。

 いままで、陰陽のバランスが調和することが大切だと説明してきました。勿論このことについては、基本的には間違いはないです。身体の形態の歪みを治すには、胃腸の力と甘味が効率よく働くこともご理解下さい。ですから、甘味の取りすぎは、形態の変化、肥満になるのです。現代では、中性脂肪などの原因もありますが、古代では甘味でした。痩せている人には肥るように作用します。甘味の適度な補給は、胃腸を丈夫にして、大きな力となります。しかし、取りすぎは胃腸が緩み、水も多くなり、食欲もなくなってきます。スポーツや労働の休みに少しの甘味は疲れをとってくれることは、皆さんも経験していることと思います。これも古代人の知恵であり、生活の実践なのです。

 以前に「土」が「水」を脅かす説明をしました。胃の働きが、腎に及ぶのですが、甘味が多いと緩む作用が起こることから、普段は堅く締まっている腎が甘味で緩み、腎機能に変化が出てくるのです。特に腎の機能があまり調子よくない人は、甘味を控えることは養生の一つになります。しかし、緊張している肉体には甘味はとても良いものになります。スポーツ選手などは、でんぷん質の糖分が無理なく身体に作用することも知っておいて下さい。また、赤ちゃんが母乳を飲む、生まれながらの生理作用には甘味が裏付けされています。食欲の基本として、本能的に働いているのです。食欲を我慢することはできませんが、思い、悩み、憂いなどの感情は胃の活動を鈍らせ、これによって弱った胃を丈夫にするのに甘味が必要なのです。甘味に頼らないで、強い意志を持った生活を送ることが養生法になるのです。


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