探索手記-18日目-

階段を降りきった私達の目の前に、どこまでも広がる山岳地帯。 どの程度続いているかは目視では測る事が出来ず、さらに地図にも記されていないので、まずは動いてみなければ始まらない。 直前の戦闘で私の作戦ミスにより消耗していた私達一番隊の傷を癒すという事で、他の隊の皆が休憩時間を少々長めに取ってくれた。その後、北へと進む。 休憩中、視線を北に向けていた私は山岳の途中で吹き荒れる吹雪を目にした。 ここは地下二階。まだ空が覗いていた地下一階とは違い、天候の変化は見られない筈だった。 しかし、私の視線の向こうでは吹雪が吹き荒れている。という事は、吹雪を操るモンスターが居ると考えてもいいだろう。 暫くその場に留まって、吹雪が止んだ頃に私達は出発した。 キャンプを張った後、探索者向けに配信される戦闘記録に目を通す。 私達が居た地点の北側、吹雪が吹き荒れていた場所で行われていたと思われる戦闘。その記録は、壮絶なものだった。 水の魔法であるブリザード。さらに、その上位魔法であるフリーズミスト。 これらの強力な魔法を自由自在に操るモンスター、スカイスピリットを相手にしていた私達と大差無い実力のパーティは、その強力な魔法によって成す術もなく敗北していた。 記録を見た限りでは、対策するには持てる全ての大技をつぎ込んで速攻を仕掛けるしかなさそうだった。 視線の遥か先では、スカイスピリットが獲物を探して山岳地帯を舞い踊っている。 私達一番隊は、その相手をする事になりそうだった。 _/_/_/_/_/_/_/_/ 懐かしい人から手紙が届いた。 私がここへ来る以前、エルタ=ブレイアでマナハンターとして活動していた頃よりもさらに昔に滞在していた、カルマートと呼ばれる竜の王国の伝説が残っている地に居る友人からだ。 彼女らの娘も、この遺跡で探索をしている。その探索者である彼女らの娘に、ヘラッポという魚の燻製──食べると力がつくのだ──と共にこの手紙を手渡された。 手紙には彼の地は変わらず冒険者で溢れている事、お世話になった商店のご主人も現役である事、そしてもう一人家族が増えるという事が書かれていた。 身重じゃなければすぐにでも会いに行くのに、という一文を見て自然と笑みが浮いた。どうやら旧友は元気でいるらしい。 そういえば、彼女らの家に居た東洋の獅子──名前は確か羅喉丸といった──が空を飛んでいるのを階段に入る直前に見かけた。という事は、この手紙は彼が届けに来たのだろう。 どこかで会う事があれば、私からの手紙も預けて、そして届けて貰う事にしようか。 彼の地を離れて十年間、私が渡り歩いてきた「不思議な土地」の話をたくさん認め、そしてここの探索を終えたら一度カルマートへ寄ると書いた手紙を。 この探索を終え、かの地へ戻った時には新しい家族に会う事が出来るだろうか。 まだ終えるのはずっと先にも関らず、土産は何にしようかなどと考えている私に気付いて、少しおかしくなった。

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