探索手記-6日目-

朝、私の枕もとに置かれていたフシギな包み。 聞けば、誰も足音など聴いていないという。 一体誰が置いていったのか…フシギというか、不審というか。 とりあえず手に取ってみる。重さはそれほどではない。 クリスマスツリーとサンタクロースの描かれた包装紙の隙間から、カードが一枚ぱらりと落ちた。 ドレスの準備ができましたのでお届け致します。 ドレス。……クリスマスパーティへの招待、だろうか。 このカードにはそれらしき事が書かれている。 独り舞踏会場へと飛ばす馬車よりも、多人数で喋りながらゆっくりと踏む足拍子の方が好ましい、とも。 私も賑やかなのは好きだ。独り歩くよりも連れが居た方がいい。 思えば、この探索もそうだ。 当初、私は一人で行くつもりだった。けれど、一人だと言い知れない不安がある。 良くも悪くも私は集団行動向けの性格なのだろう。 包みの中身はカードの通りドレス……と言って良いものか解らない代物だった。 半透明の生地が大半を占め、頭からすっぽりと被る。着ぐるみに近いもの。 そう、生地の大半が半透明なのだ。 正面は不透明な生地でカバーされているけれど、横・あるいは後ろからは淡く透けている。 着たならば身体は透けてしまう…ような気がする。 しかし、このまま無碍に捨ててしまうわけにもいかないだろう。 誰も居ない事を確認してから、私は服に袖を通してみた。 ……周りの視線が、微妙に気になるけれど。 包みといえば、受取ったのは私だけではないようだ。 アルテイシアさんも、普段のコートとは違う赤い服に身を包んでいた。 なるほど、サンタクロースのコスチュームだ。 よく似合っている。……なんで私は着ぐるみなんだろう。ちょっとだけ羨ましい。 六日目の探索はそれ程問題も無く、順調に進んだ。 魔法陣から山岳地帯を越え、砂地へ。 見渡す限りの砂、砂、砂…集めた情報によると、この先二日の位置には魔法陣は無いようだ。 協議の結果、山岳地帯に戻り、さらにその先にある魔法陣を目指すという事になった。 山岳地帯には鉱石類が多い。魔石の材料のみならず、良質な物理装備にする事もできる。 下準備としてはもってこいだ。尤も、その分敵は強いのだけど…。 兎に角、今は出来る限りの準備をするしかない。 目の前に立ちふさがる、殻を持ったミミズを打ち倒して。 ■追記■ 不思議な森へと迷い込んだ。 夜、ちょっとした散歩のつもりで歩いていたのだけど…突然、目の前に桜の木が生えた丘が飛び込んで来たのだ。 慌てて辺りを見回すと、居たはずの砂地ではなく森の木々が目に飛び込んで来た。 テレポータでも踏んだのだろうか。そうこうしているうちに雨まで降ってきた。 木の下で雨宿りをしていると、宿があるという声。本当は夜が明けたら即探索なのでまずい…のだけど。 情報収集は基本だ。宿であれば何かの情報があるだろう。 そんなわけで宿へと走る。話を聞くと、この森は遺跡とは時間の進み方が違うらしい。 何かの魔法が掛かっているのか、あるいはそれ以外の超常的な力なのかは解らないけれど、兎に角安心した。 エニシダさんに指摘された、「クロスレンジでの戦闘手段」。 私はそれを持っていない。色々考えた結果、槍や格闘ではなく短剣が私には合っていそうだ。 短剣の訓練をすることにしよう。

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