探索5日目

探索五日目。 頭痛はまだ続いていたが、極力顔には出していない……つもりだ。 それとは関係ないが、遠目で分かるほどに分隊のアーヴィン氏の顔色が悪い。 厄介な疫病や生物毒、敗血症などでなければ良いのだが…… 外敵排除はここのところ安定している。が、油断がいつ酷いことに繋がらないとも限らないので、 今後の探索はより一層の注意が必要になってくるだろう。 なるべく固まっていないものたちを各個撃破できれば問題ないのだが、あの巨大な蟻は厄介そうだ。 それにしてもいつもの事とはいえ、戦闘激化に伴いひしひしと己の性別を自覚する。 とりわけ邪魔なのは、この無駄に育った乳房だ。非常に煩わしい上に、戦闘服や軽鎧の作成時には 立体を意識した仕上がりにする必要があり、非常に不経済である。 一般的には異性の視線を集めたり、良き母親になる条件などと言われているが、どちらも私には縁 がない。無用の長物というやつか。 ―――どこかの蛮族の女戦士は、戦いに邪魔な乳房を切除してしまうという。 相当の出血が予想されるので、この島にいる間は無理かもしれないが、無事帰還できたら視野に入れ ておこう。 さておき、エニシダ氏に武器を―――拾ったやたらと太い針を使って短剣を作ってもらった。 丁寧に布に巻かれた中から出てきたのは、拵えに灰色熊の意匠が入った逸品だ。驚くことにコレを 一日で作るのだという。 今日はサフィさんに白い石を削って護石―――タリスマンを作ってもらう予定だ。 飾り気も何もないと言われそうだったが、やや強行にタリスマンを主張した。装飾を華美にすると、 きっと戦闘中に付けるのが勿体なくなる。 本当にこういった創造が出来る人は凄い。 無から、若しくは1から2も3をも作り出すのだ(私の調理は創造などと呼べるものではない)。 2や3を0、あるいはマイナスにする者に比べると、段違いに眩しく感じられる……。 明日はこういった、パンサー隊以外のメンバーのことも書いてみよう。 【追記】 体調が芳しくなさげなアーヴィン氏だったが、聞けば丸二日食事を摂っていないのだそうだ。混じり気の ない人間であれば、体調が悪くなって当然だろう。 しかし一日に一度食事を摂っているとは言え、材料が草やパンくずとは、我々が如何にハードな状況に 居るかと思い知らされる。余程の戦況でないとこうはならない。 その食材を、なるべく消化良く、腹持ちが良く作るのも私の役目だ。責任重大である。

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