『毒蠍』 しばらくその姿は見たくないな。 先日懸念していた猛毒のことを考えている余裕もなかった。 毒蠍の攻撃は想像以上に激しいものだったこと。 そしてその結果として生命力をかなり消耗してしまったのだ。 この世界では生命力の強さを表す表現としてHPという言葉があるらしいが。 ─ところでHPって何の略なのだろうか。 ハートポイントでいいのだろうか?  まぁ、ここでこんなことを気にしても仕方がないのだが。 話を戻そう。どうも戦闘が終わってもそのHPというものがあまり元に戻ってないようだ。 つまり私達の部隊は「十分に回復していない状態」で次の相手と戦うことを余儀なくされたのだ。 私は後ろに居たお陰でそれほど消耗していないのだがフォウト氏とエゼ氏はどうだろうか。 こういう遺跡探索は難しいものだと改めて感じる。 1回1回を全力で戦うことは簡単だが、その後のことまで考えて戦うのはなかなか大変だ。 力の入れ具合を変えるというか少しゆとりを持たせるというか。少なくともそんなことを考えたことはなかった。 例えば先日まで必死で覚えた新しい魔法の「マジックミサイル」にしてもそうだ。 最初の遺跡外に戻れば再び使えることができるであろうが、今の覚えたての状態では1回しか使えない。 効果がわからないのであれば試しに使う手も使えるのだが、知っている魔法だと使いどころに非常に悩むのだ。 今の仲間の状況と出てくる相手によって的確に使いどころを考えないといけない。 この魔法は果たして今は使うべきところなのだろうか─ ああ、そういえば人物紹介をするのを忘れていたな。 せっかく記録に残すのであればこういうものを書いておくのも悪くはないであろう。 ─いや、決してついこないだまで特徴をつかめてなかったわけではない、ということだけは言っておこう。 (*ナミサの日記〜3日目抜粋)

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