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精神保健福祉協会だより 編集後記 抜粋 第63号(2019.3.31)

◆新しい元号の時代に向けて、期待と不安の入り混じるこの頃です。平成に入って間もなくバブルが崩壊し、その後の日本経済は長い停滞を経験しました。終身雇用は保障されなくなり、不安定雇用が一般的になりました。年間の自殺者3万人時代が長らく続くとともに、子どもの貧困問題も大きく取り上げられました。その上に思いもよらない大災害が続きました。少子高齢化が顕著となり、社会保障費は増大し続けています。インターネットが普及し、私たちの生活が大きく変化しました。今や多くの子どもがスマホを操り、日常生活に欠かせないものになっています。ビッグデータの活用や、大容量高速通信による技術革新が今後一気に加速しそうです。いよいよ平成最後のカウントダウンが始まります。

◆大リーグマリナーズのイチローが、とうとう現役を引退しました。平成4年にオリックスに入団し今日まで、まさに平成の時代を駆け抜けたヒーローでした。3/20,21日本で開催された開幕2試合では安打は上積みされませんでしたが、日米通算4367安打の世界記録をのこして現役を去りました。試合途中の交替儀式も素晴らしかったし、試合終了後の観客との一体となった球場内一周も感動的でした。引き続いて開催された引退記者会見では、多くの記者が緊張して言葉を選んで質問をするのに対して、成し遂げたことへの自信と満足感を漂わせた余裕の応答が印象的でした。これからの若者に対して「できると思うから挑戦するのではなくて、やりたいと思えば挑戦すればいい」との言葉を残しました。

◆40〜64歳の中高年ひきこもりについて内閣府が調査を行い、全国で61.3万人にのぼるという推計が出されました。ひきこもりは、さまざまな要因の結果として仕事や学校などの社会参加を回避し6ヵ月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態とされています。これまで若者に特有の現象とみられていましたが、高齢層にも広がりをみせており、期間も長期化しているようです。親の高齢化や死亡を機に、隠されていたひきこもり問題が浮上してくる「8050問題」(80歳の親と50歳に子ども)は大きな社会問題となってきています。引きこもりのなかには様々な精神疾患が隠れていると考えられますが、診察室で待っているだけでは出会うことは困難です。保健、福祉、医療が連携して、アウトリーチを含めた支援体制が必要です。

◆幼い子供たちが虐待によって命をなくす事件が続いています。東京目黒区の事件では5歳の女児の「もっとあしたはできるようにするからもうおねがいゆるして」というノートを残しており、悲しみが一層募ります。千葉県野田市の事件では児童相談所の不手際から、親元に戻された女児が「児童相談所の人にはもう会いたくないので来ないでください」という手紙を残しました。虐待は、発達途上にある脳の機能や神経構造に永続的なダメージを与えるという研究報告がされています。児童虐待の防止策を強化するため、政府は、3月19日の閣議で、親による体罰を禁止するほか、児童相談所に弁護士や医師の配置を義務づけるなどとした法律の改正案を決定したようです。児童虐待への取り組みは待ったなしの状況です。

(滋賀県精神科診療所協会 上ノ山)




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