心の病について

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うつ病 (うつ病治療に対する最近の話題)

 うつ病とは

心身のエネルギーが欠乏状態となってしまう病気です。気分が落ち込み、意欲が低下し、不安になったり焦ったりするとともに、身体のあちこちの不調が出現してきます。

 うつ病になりやすいタイプ

几帳面、きまじめ、仕事熱心な方がなりやすいと言われています。
また引っ越し、病気やけが、職場の配置換え、子供の独り立ちなど環境の変化が引き金となることがあります。

 うつ病の症状

精神症状:気分が沈む・落ち着かない・集中力や判断力の低下・何事もおっくうになり、意欲がわかない・将来に対して悲観的になったり絶望的になります。
身体症状:食欲低下・不眠・頭痛や肩こり・全身倦怠感・その他様々な自律神経失調症状があらわれます。

 うつ病の治療

治療は休養のほか薬物療法と精神療法が基本です。最近は様々な抗うつ薬が開発されていますので、自分にあった薬の処方を発見することが大切です。

 家族などの周囲の協力

なまけではなく病気であることを理解して、安心して休養できる環境を保障することが大切です。

 自己チェック

  • 不眠、とくに途中覚醒したり、朝早く目覚める
  • 午前中元気が出ない。むしろ夕方の方がましになる。
  • 疲れがとれない。頭痛や肩こりがある。
  • 仕事に取りかかる気になれない。集中できない。
  • 物事に対する興味がうすらいでいる。
  • 何となく不安でいらいらする。
  • 将来に対して悲観的になったり絶望的になる。
  • 過去にこだわってくよくよする
  • 食欲、性欲が落ちている。


睡眠障害

 不眠症について

不眠症は珍しい病気ではありません。様々なストレスのかかる現代社会では、高血圧や糖尿病などの生活習慣病に加えて、不眠症になる人が多くなりました。規則正しい睡眠をとることは、健康の基本条件といえます。
単に不眠症といっても様々な種類の障害がありますので専門医の受診をお勧めします。不登校、出社拒否などの問題の背景に睡眠障害が隠れている場合があります。

 睡眠障害の種類

量の障害:不眠(入眠障害、熟眠障害、早朝覚醒)〜過眠
質の障害:夢遊症〜レム睡眠行動障害
位相の障害:睡眠覚醒リズムの障害/睡眠相後退症候群

 眠りやすい環境作り

  • 就寝前にはコーヒー等カフェインを摂取しない。
  • 温めのお風呂で、リラックスする。
  • 適度な運動や食事を心がける。
  • 規則正しい生活をする。
  • 寝る前は暗くして静かに過ごす。
  • お酒で眠る習慣はやめる。

 睡眠自己チェック

  • 寝付きが悪い。
  • 睡眠の途中で目が覚めてしまう。
  • 夢をよく見る。
  • 朝早く目覚めてしまう。
  • いつもあまり眠った気がしない。
  • どうしても朝おきれない。
  • いびきが大きいと言われる。

 睡眠薬に関する迷信〜誤解 (専門医に御相談ください)

  • 睡眠薬をのむと早く呆ける。
  • 睡眠薬をのむと癖になる。
  • 睡眠薬は続けるとだんだん効かなくなる。
  • 睡眠薬は副作用が強い。


パニック障害

 パニック発作とは

死んでしまうかも知れないと思う程の強い恐怖感や不安感に突然襲われ、同時に動悸・息切れ・発汗・めまい・腹痛などの激しい自律神経症状を伴う発作のこと。

 パニック障害とは

パニック発作が繰り返し起こること。その発作がいつ起こるのか予測できないことが特徴です。特定の場所に限局して起こる場合は、その場所をさけるようになり、日常生活全般に不自由な制約を受けるようになります。
例えば、電車、エレベーター、飛行機、車などに乗れなくなったり、人混み、映画館、レジで並ぶことなどができなくなります。

 予期不安について

パニック発作が繰り返される内に、これから先、同じことがまた起こったらどうしようと、先案じをするようになります。そのため行動範囲がますます制限され、徐々に自信をなくしてしまいがちになります。

 治療について

薬物療法を基本に、精神療法、行動療法を組み合わせます。
非常に苦しい症状であるにも関わらず、一般内科的な検査では異常を認められないため、より一層不安になってしまいがちです。この症状は病気であり、適切な治療で回復することを知ることがまず第一歩です。

摂食障害(摂食障害について)

 摂食障害とは

食欲に関する病気です。拒食症と過食症の両方があります。
多くの場合、ダイエットをすすめていくうちに、ある時点を境に食欲のコントロールが効かなくなります。やせを美化奨励する文化的な背景があります

 拒食症

標準体重の15パーセント以下の体重になっても、なお太ることへの強い不安を持ち、なんらかのやせる努力をします。拒食症がすすむとおなかがすいたという感覚なくなりますし、やがて食べたくても食べれなくなります。無月経など身体的にさまざまな合併症がおこります。
(BMI = 体重(Kg)÷身長(m)の2乗として、BMI=22を基準として標準体重を考える)

 過食症

むちゃ食いを繰り返します。体重が増加してしまう場合と、体重増加を防ぐための様々な努力の結果、体重の変化があまり目立たない場合があります。
過食症ではおなかがいっぱいになったという感覚がなくなります。その結果、食べたくなくても食べてしまいます。肥満や電解質の異常などの合併症がおこります。

 気分障害との関連

食欲のコントロールに失敗を繰り返すうちに自信喪失、自己嫌悪が強くなります。

 強迫性障害との関連

食事に関するこだわり、体重や体型に対する強いこだわりがみられます。いくら痩せていてもそれを認められないという点で認知の歪みも指摘されています。

 治療について

薬物療法を基本に精神療法、家族療法などをくみあわせます。
生命に影響を与えかねない病気であるにも関わらず、本人も家族も気持ちのもち方で治ると考えがちです。
この状態は本人の意志とは無関係に、あるいは意志に反して起こる病気であること。そして根気よく適切に治療すれば回復しうる病気であることを理解することが治療の第一歩です。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)

 トラウマ(心的外傷)

非常に強いストレスにさらされた後の、心に残る後遺症のこと。
1970年代のベトナム戦争からの帰還兵の心の傷や、女性解放運動をとおして性的虐待を受けた女性の心の傷が注目されるようになりました。

 PTSDの症状

心の傷が一ヶ月以上に渡って持続します。
心に傷をもたらした悲惨な出来事が、イメージや思考や感覚としてふいに蘇ってきます。そのためその出来事に関連したさまざまな事柄を避けようとします。
その結果、外傷的体験の記憶だけでなく日常生活の全般にわたって生き生きとした感覚が消失したり、逆に過覚醒状態となって眠れなくなったり不安で落ち着かなくなったりします。

 合併症

症状の持続に伴ってうつ病、パニック障害、摂食障害などが合併しやすくなります。

 心の傷概念の拡大〜心因概念の縮小

戦争の被害や、大災害による被害だけでなく、幼児期の虐待や家庭内暴力や性的虐待など様々なストレスが心の傷を引き起こし、その後の人生において様々な精神症状を引き起こしている可能性が気付かれるようになりました。
心の傷と、海馬を中心とした大脳辺縁系の障害との関連が指摘されています。

 治療

薬物療法、精神療法、行動療法を組み合わせます。(EMDRという眼球運動を利用して外傷体験を再処理する治療法が注目されている)
「異常な出来事に対する正常な反応」と受け止めることが治療の第一歩です。

統合失調症

 有病率

有病率は0.8〜1%で、100〜120人に1人かかる非常に多い病気。しかも地域差や文化差は認められていません。

 病名について

E・ブロイラーは思考、感情、行動などの心理学的要素の分裂という事態を捉えてSchizophrenieと命名(1911年)。この病名は長らく精神分裂病と翻訳されてきた。しかし「分裂」という言葉は、病気の本態を表しているとはいえず、むしろその言葉のもつ独特の響きが偏見を助長してきたため、H14年8月、日本精神神経学会総会で統合失調症という病名に変更された。

 病気の症状

急性期は幻聴や被害関係妄想などの陽性症状が中心で、慢性期は意欲の低下や感情的引き込もりなどの陰性症状が中心となります。
急性期は「むきだしのアンテナ」と形容されるような過覚醒〜神経過敏の状態が続くため、それがおさまった後は比較的長期の疲弊〜消耗期が続きます。

 ストレスー脆弱性モデル

発病機序としては今日、ストレスー脆弱性モデルが受け入れられています。なんらかの心身機能の脆弱性を持った人が、様々なストレスを受けることによって発病に至ると考えられています。脆弱性は遺伝とは異なります。

 ドーパミン仮説

向精神薬の作用機序が脳内のドーパミン受容体の拮抗作用を有することから、この病気では脳内のドーパミン神経伝達の亢進が推定されています。最近はドーパミン・セロトニン双方の受容体に拮抗する薬の有用性が注目されています。

 再発を防ぐ

一度発病すると、再発しやすいのは事実です。ストレスに対する防御因子を強化することによって再発を防ぐ必要があります。
たとえば向精神薬を服用すること。生活技能訓練などによってストレス対処行動を身につけること。家族をはじめとした様々な周囲のサポートを受けることなどが重要です。

 家族の関わりで気をつけておいた方がよいこと

  • 批判的になり過ぎないように。
  • 干渉的になり過ぎないように。
  • 期待を少し下げることで余裕を持つこと。
  • 自分を犠牲にして無理をし過ぎないように。
  • 少し距離をおいて、むしろ家族自身の楽しみを見つけること。
  • 家族会など家族同士が話し合う場を活用すること。
     など。

 治療

薬物療法、精神療法、デイケア、生活技能訓練などのリハビリテーションを組み合わせて行います。
高血圧や糖尿病と同様、比較的慢性に経過する病気なので、根気よく治療をする必要があります。様々な社会的な資源を利用しながら孤立を防ぐことが大切です。




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