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精神保健福祉協会だより 編集後記 抜粋

 第43号(2011.8.31)

編集後記

◆3/11の東日本大震災以降、被災地での懸命の努力にもかかわらず、中央では政治的混乱が続き、本格的な復旧・復興支援が遅れてきました。2年前の政権交代の期待もすっかり褪せてしまったなかで、8/30ドジョウ宰相の登場となりました。泥臭いリーダーシップとはどのようなものなのか、不安を抱きながらも注目していかざるを得ません。

◆福島県では地震・津波の被害に加え、福島第一原発事故による風評被害によって、大変苦しい生活を強いられています。福島第一原発から30km県内の精神科病院が入院機能を停止させられ、同圏内の精神科福祉施設も閉鎖を余儀なくされています。その中で南相馬市では2か所の精神科診療所が4月から何とか診療再開にこぎつけ、避難所巡回も頑張っておられます。ただ、相馬市を中心とした相双地区(第一原発から北の太平洋沿岸地域)は19世紀終わりに「相馬事件」があった関係もあり、精神科医療機関が元々大変少ない地域です。福島医大がセンターとなって大学有志、ボランティアの精神科医師、コメディカルスタッフの方々とともに心のケアチームを展開しています。公立相馬総合病院には精神科がなかったのですが、そこに臨時精神科外来を作り、午後は精神科診療を行う一方、午前は仮設住宅を訪問したり、「ちょっと一休みの会」などを開催し、生活と健康の包括的な相談支援活動を行っています。福島医大からの要請を受けて兵庫県精神神経科診療所協会を中心に全国の診療所の仲間も交代で支援に入っています。

◆7月6日の社会保障審議会医療部会で、精神疾患を5大疾病に位置づける方針が決められました。これまで癌、脳卒中、心臓病、糖尿病が医療計画を策定すべき4大疾患とされてきました。H20年の統計では精神疾患の患者数は323万人となっており、糖尿病237万人、がん152万人などを大きく上回っています。年間3万人を超える自殺者の約9割が何らかの精神疾患を抱えているとされています。糖尿病による死亡者は1.4万人なので、その2倍の方がなくなっていることになります。ひきこもり・いじめ・虐待・DVなどの様々な社会問題の背景に精神疾患の存在が指摘されています。もはや精神疾患を無視した地域医療計画では済まされなくなっています。H24年4月から都道府県は、精神疾患の予防や早期発見・治療からリハビリテーションに至る地域医療計画を、これまでの4大疾患と同等のレベルにおいて策定しなければなりません。精神科特例などとして少ない人員配置や、低い診療報酬を容認し放置してきた差別的な精神科医療施策を転換していくことは一朝一夕では出来ないと思われますが、ようやくその一歩が始まろうとしていると思います。

(滋賀県精神神経科診療所協会 上ノ山)




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