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精神保健福祉協会だより 編集後記 抜粋

 第44号(2011.12.31)

編集後記

◆2011年末は厳しい寒波の日々が続いています。12/26の長浜市(柳ケ瀬)では80cmを超える積雪があったそうです。3/11の震災直後には津波で破壊された街や大地に雪が積もっていく映像が映し出されていました。大切な人や物や、あるいは故郷を奪われた人たちの上に、二度目の冬が容赦なく訪れています。12/28には被災地の一次避難所は全て閉鎖されたそうです。それでも多くの人は仮設に住んだり、県外に避難して不自由な生活を送っています。自宅に戻れても地域社会が崩壊し、支援が届いていないところも多いようです。

◆福島第一原発は「冷温停止状態」に達し、「発電所の事故そのものは収束に至った」と政府は12/16に宣言しました。注水設備の多重性・多様性が確保され、「不測の事態が発生した場合でも」「再び避難をお願いすることはない」とのことですが、にわかには信じられません。メルトダウン、メルトスルーなどという事態が発生しているとされているのにその実態はいまだに分かりません。福島の人たちは正確な情報が与えられないまま、故郷を追われ、不必要な放射線被曝を強いられ、目に見えない放射線被害の真只中にいます。

◆滋賀県にも多くの避難者が来られています。9月末現在で、県別では福島県256人、宮城県75人、岩手県10人、その他80人です。そのうち児童生徒の転編入数は、幼稚園・小中学校79人、高等学校8人です。「避難したいのに避難できない子ども」がいる一方「避難して自責感を感じている子ども」がいます。逃げても、逃げなくても大変つらい状況です。被災現地でも、滋賀県内でも被災者の心のケアにあたっては、更なる被害を与えないように配慮しつつ、回復力を促進するような継続的な支援が求められていると思います。

◆被災地でのこころのケア活動の一つとして、原クリニック(仙台)、宮城クリニック(石巻)を中心とした現地スタッフの活動を、全国の精神科診療所の仲間が全面的にバックアップしてきました。その活動から社団法人“震災こころのネットワークみやぎ”が生まれ、仮設住宅への訪問、僻地への生活支援を含んだ医療支援、公的機関での相談業務等を行ってきました。その活動が石巻市の「心のサポート拠点事業」の一環として位置づけられ、10/1からJR石巻駅前に “からころステーション”が開設されています。現地スタッフは被災者でもあり、その献身的な活動には頭が下がりますが、継続していくためにはより一層の全国的な支援が必要になると思います。

◆暗い話ばかりでは2011年を締めくくれません。ユーモアあふれる科学研究に対して贈られるイグノーベル賞を滋賀医大の今井先生、琵琶湖病院の村上先生を中心としたグループが、9/29に受賞されました。わさびの匂いで聴覚障害者に火災を知らせる警報装置を開発したことが評価されたようです。この紙面をお借りして、あらためてお祝い申し上げます。このような独創的でかつ実用的な研究が若い医師や研究者たちに勇気や希望を与え、滋賀県に有能な精神科医を含む人材がよりいっそう結集することを期待したいと思います。

(滋賀県精神神経科診療所協会 上ノ山)




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