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精神保健福祉協会だより 編集後記 抜粋

 第47号(2012.12.31)

編集後記

◆シャープは2012年度4500億円の赤字見通しで存続の危機だとか。パナソニックも7650億円の赤字見通しで社長自らが「もはやうちは負け組」と認める事態。日本の誇るべき優秀な製造業はどうなってしまったのでしょう。私個人としては、焼け石に水と分かっていても、せめて日本ブランドのスマートフォンを買うように周囲に勧めていますが・・。
 その中で、山中教授のiPS細胞開発に対するノーベル医学・生理学賞受賞のニュースは、わが国の科学技術の潜在能力の高さを示してくれました。ともすれば自信喪失になりがちな昨今の日本の社会に希望を与えてくれる数少ない話題の一つだったと思います。

◆暗い世相を反映して人々の判断は極端に走りがちです。12/16衆議院総選挙の結果、自公両党で全議席の2/3議席を超える圧勝となりました。一方民主党は現職閣僚が次々と落選する惨敗でした。3年3か月前に政権交代を成し遂げ、新しい政治への期待が強かっただけにその失望感は大きかったと言えます。オセロゲームのように、ガラッと入れ替わるさまは、ゲームとしての面白さはあっても、その極端な振れに不安を抱かずにはおれません。投票率は59・32%で、戦後最低だったそうです。民主党には懲り懲りしても、乱立する政党の中で投票行動をためらった有権者が多かったようです。

◆昨年4月、栃木県鹿沼市で登校児童の列にクレーン車が突入して、小学生6名が死亡する事故がありました。運転者にてんかん発作を認めたことから、警察庁ではてんかんなど運転に支障を及ぼす恐れのある発作を伴う病気患者の運転免許制度について検討してきました。10月25日にまとめられた報告書では、持病に関して虚偽申告で免許を取得・更新した場合の罰則新設が提言されました。さらに、交通事故遺族の約20万人の署名を背景に、担当医師の通報義務化が検討されました。しかし、医師の守秘義務の問題や治療関係への配慮から、最終的には医師が任意で警察側に情報提供する制度の導入という提言となっています。被害遺族の訴えは重いものですが、厳罰化を求める空気のままに極端な法改正に至らないことを願っています。

◆今年7月大阪地裁で、アスペルガー症候群を有するとされる42歳の男性による家族殺害事件に対して、求刑懲役16年を上回る懲役20年の判決が出ました。その理由はアスペルガー症候群により十分な反省のないまま社会復帰すれば再犯の恐れがあること。さらにアスペルガー症候群に対応する受け皿がなく、今後も見込めないため、許される限り長期間刑務所に収容する必要があるということでした。アスペルガー症候群に再犯の可能性が高いというデータはないし、発達障害者支援センターを中心に社会生活支援の体制を整えつつある中で、偏見に基づいた驚くべき判決です。裁判員裁判の危うさが露出したものと思いますが、時代の空気がこのような極端な判断を推し進めないことを祈ります。

(滋賀県精神神経科診療所協会 上ノ山)




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