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精神保健福祉協会だより 編集後記 抜粋 第60号(2017.4.10)

◆2017年大相撲春場所は横綱稀勢の里の連続優勝で幕を閉じました。新横綱の優勝は貴乃花以来22年ぶりだそうです。千秋楽の2日前に左肩付近を大怪我して優勝は無理と思われていたのに、本割、決定戦を制して劇的な逆転優勝となりました。2番続けて敗れた大関照ノ富士はヒール役になってしまいかわいそうでしたが、膝の具合が相当良くなかったのでしょう。認知症で通院しているお年寄りが、普段はもの忘れで困っておられるのに、「稀勢が勝ってよかった」と喜んでおられたので、よほど感激されたのだと思います。

◆この冬の大雪には大変困りました。1月23日から25日にかけて、彦根では積雪が54cmに及びました。精神科に通院される方は、比較的律儀な方が多く、台風の暴風雨の中でも、殆どの方が予約を守って受診されるのですが、今回ばかりはキャンセルが相次ぎました。「診療所近くまで来ているのに道路が渋滞してたどり着けない」など、悲鳴に近い電話が相次ぎました。2〜3日の薬の予備がある人は良かったですが、ない人は大慌てでした。東日本大震災では、大規模な精神科医療へのアクセス遮断がおこりましたが、今回の大雪はそのミニ版とでもいえる事態でした。天災はいつ起こるか知れず、日頃から準備をしておく必要性を痛感しました。

◆2017年通常国会の冒頭、総理大臣が初診表明の中で、精神保健福祉法の改正に言及したので驚きました。それほど、相模原事件の衝撃が大きかったということだと思います。2016年1月から開催されていた国の検討会では当初、医療保護入院の手続きのあり方等が中心テーマでしたが、7月に相模原市の障害者支援施設で発生した殺傷事件を機に、措置入院後の支援体制のあり方が急遽取り上げられることになりました。医療保護入院も措置入院も公的権力の行使による非自発的入院なのですから、その後の支援体制にも公的な責任が発生するのは当然です。事件の有無にかかわらず整備しておくべきものでした。

◆この事件の犯人については未だ全貌が不明な段階で、「二度と同様の事件が発生しないように」と精神保健福祉法改正を位置付けることには疑問があります。むしろ、精神科医療に犯罪防止効果を期待するような誤った認識を助長する恐れがあります。改正法案では、措置入院患者に対して、保健所が中心になって退院後支援計画を作成し、支援地域協議会を開催していくこととされています。そこに居住地の市町や通院先の医療機関、その他の関係機関が加わり、地域での生活を支援していくことになります。これが精神障害者の生活を地域で支えていく仕組みの一つとして機能していくよう期待したいと思います。

◆生活保護受給者数は、2016年9月時点で約215万人となっています。生活保護に至る前の段階の自立支援策の強化を図るため、2015年4月1日から、生活困窮者自立支援法が施行されています。これまでの生活保護行政では、ともすれば強引な就労支援や生保打ち切り指導が目立っていましたが、この法案では自立に向けたアセスメント、プラン作りのもと継続的な支援を行うこととされています。滋賀県では野洲市で先進的な取り組みが行われています。包括的な自立相談支援に加えて、居住確保支援、就労支援、家計再建支援、こどもの学習支援など状況に応じたメニューが準備されています。生活困窮者の中には精神障害者も多く含まれていると想定されるため、医療機関との連携も重要となってきます。生活困窮者の自立と尊厳の確保、生活困窮者支援を通じた地域づくりが求められています。

(滋賀県精神科診療所協会 上ノ山)




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