探索1日目


島にいる。照りつける日ざしや、しげる木々や、海にほどちかいところでは耳にひびいてくる波の音に、 わたしはいま島にいるのだとふかく感じる。 島は、どこかなつかしい。わたしのはじめて呼びだされたところも、島だったのだと聞く。 わたしはそこで命をあたえられたのだと聞く。 この島をおとずれる旅びとたちはみな、血気にはやっているように見える。 欲や、野心や、やるぞっ、という気もちを、もっているように見える。 (もちろん、そうは見えない人もいる。ひどくつかれたような様子の人や、暗くしずんだ面持ちの人もいる。  なにもかもを失ったように見える人もいる。  かれらがなぜ一握千金という希望ばかりがねむるこの島をおとずれたのか、わたしにはよくわからない。  あるいはこの島にあるひとかけの希望をもって、みずからの暗い生を照らそうとしているのかもしれない。  そうでないかもしれない。そうではないような気もする。わたしはもうすこし、見識をひろめなくてはならない) それた。なおす。 この島をおとずれる旅びとたちはみな、血気にはやっているように見える。そこまで、書いた。 旅びとたちの輪のなかに、ひとりで入るのも気がひけたし、ひとりで進みつづけていく自信もなかったのだけれど、 さいわい、いろいろな機縁がうごいてくれて、どうにか混ぜてもらうことができた。 よせあつめのような、ごったにのような、ひどく不統一な、きもち女性人口の多い、そういう、妙なパーティになった。 トライアド・チェイン。 わたしたちは自らのかたちづくる一団を、そうよぶことにした。 わたしたちはひとまず、三人ずつの小さな集まりにわかれて、 けれどおたがいの場所を知りながら、遺跡にもぐっていくことになった。 わたしとともに歩くのは、ふたり。エニシダさんと、サフィさんという。 今日はまず、ひとまず、そのふたりについて、書く。 ほかの六人については、きっとどこかほかのところで書くこともあるだろう。 エニシダさんは、ロッドのような、かざりけのないフルートのような、ふしぎな武器をつかう。 口とあごからヒゲをすこしたらして、そういえば、えにしだの花がこうべをたれるのに似ているような気もする。 ……そういうのが語源じゃあ、ない気もする。 サフィさんはあかるい子だ。いろいろなことを、目をきらきらさせながら、知ろうとする。かわいい。 わたしはもう、きちんと、しっかり意志をもっているおねえさんなので、だいじょうぶだけれど、 なみの歩行雑草であれば、彼女の、あのふしぎな魅力に、ふらふらとついていってしまうかもしれない。 ふらふら。 ……は。 いや。 だいじょうぶ。わたしはおねえさんです。

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