探索手記-22日目-

 その知らせは突然訪れた。  探索者の一時退去──詳しい理由は解らない。  とにかく、ここでの探索はあと三日で切り上げなければいけないようだ。  あと三日…とても短い時間。その時間で出来る事はといえば限られている。  情報を集めてみると、どうやら魔術と短剣戦闘の複合者は相当少ないらしい。今の私でも先端を走れる可能性がある。  さしあたり、短剣の修練を最優先にしてみようと思う。  戦闘、及び訓練は順調だった。  練習試合ではムーンレスナイトによる属性コントロールのテストを主に行い、その結果二割程度減衰している事が判明。  私達パーティにはやはりこの技は必要だ。修得して正解だっただろう。  戦闘については特に変わった事は無い。マジックナイフの威力が順調に延びている程度だ。  面白みが無いといえばそれまでだが、無用なトラブルは無い方がいいだろう。  この遺跡は、建造されてから長い時を経ているせいか天井が所々で朽ちて地上が覗ける。  天井の向こうには桃色の花々──桜の花がちらちらと見受けられた。  この遺跡は季節が早く巡るのだろう。少し前に雪がちらついていたと思っていたら今度は花の季節だ。  ともあれ、このような遺跡の中から花を見られるとは思わなかった。  考えてもみればこの遺跡はあまりにも不自然な事が多い。季節の巡り方だけではなく生態系の異常、そして「遺跡の真中にも関らず貝殻が落ちている」等だ。  私も当初は大地の変動などでこの遺跡のある島が現れたのだろうとも思っていた。  しかし、遺跡があるという事はここで何者かが暮らし、そしてそれは長期間に渡っていた事になる。  大地の変動ではとても説明がつかない…この遺跡の謎は深いけれど、残り三日で解き明かす事は出来なさそうだ。  それはさておき、せっかく桜が見られるという事なので安全な場所にキャンプを張った後花見をする事と相成った。  周囲の状況をじっくりと吟味して、安全が確認されてから着替える事にする。  探索時は動きやすさ重視の服装だけれど、普段着はさすがに違うのだ。  物陰でささっと着替え終えて皆の下へ戻ると、間も無く酒宴を開始するというタイミングだった。  たまにこうして遺跡内でリラックスするというのもありだろう。うん。

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