探索手記-2日目-

この遺跡はどうやら長期間放置されていたらしく、床が風化してしまっていたり草が生い茂っていたり、といった状況になっている。 さらに、岩山や森林といった自然発生したような地形すらあり、まさに「島そのものが遺跡」といった風情だ。 ここを探索するのは一朝一夕では無理だろう。長期間の計画の元、さらに遺跡外での補給のタイミングなども視野に入れて行動しな ければいけない。 出発点は皆同じ。ならば、危険を排して地道に探索するか、あえて危険を承知で先へ進むかの二択になる。 さて、私達はと言うと。 地図と照らし合わせてじっくりと検討した結果、2箇所に行き先を絞る事が出来た。 一箇所は恐らく安全であろう草地、そしてもう1箇所は多少の危険を伴うであろう砂地。 「殆どの人がスルーするだろう北東隅へ行こう」なんて案もあったけど、見事にスルーされた。 ともかく、行き先の候補は2箇所。検討に検討を重ねる。 「草原か、砂地か。どちらが良かろうな」 「砂地は危険だ。安全な草原の方がいい」 「安全だが、実入りは少なかろう」 「──実入り」 「そう、実入りだ。探索をするならば実入りは多い方が良い」 「危険を伴うぞ」 「危険を冒さなければ遺跡探索は行えまいよ」 「しかし」 「危険な場所には相応の見返りがある」 「まだ始まって間もないのだぞ」 「では砂地へはゆかぬのか?」 「ゆかぬとは言っておらん」 「ならばゆくか」 「うむ」 「ゆこう」 「ゆこう」 そういう事になった。 ──目的地へと移動する。 同時に遺跡入りした多くの人々と私達は途中で別れ、南へと進路を取った。 砂地の南側、山岳地帯が目に入る場所。そこが目的地だ。 道中は何事も無く、無事辿り着いてキャンプを張る。 一息ついてあたりを見回すと、ちらほらと私達のような人々が目に入った。 なるほど、どうやら考える事は皆似たようなものらしい。 ふ、と。 視界に何かが入った。 人ではない、何か。 探索者の中には、見た目からして人・亜人ではない者も混じっている。 しかし、これは「そういうもの」ではなかった。 本能と敵意。明確すぎる気配。 蠍や百足といった生物が蠢いているのが見えた。

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