探索手記-3日目-

巨大な毒蠍・毒百足をどうにか退けた。 が、やはりここは一筋縄では行かないらしい。 別の隊では前衛の二人が大きな負傷を負い、また私の前に立ってくれた二人も彼女ら程ではないにしろ傷を負った。 さらに別の隊はあろう事か一人迷ってしまうという事態。 今後、このようなミスは減らさなきゃいけない。というか、私自身がそういうミスをしないようにしなくてはね。 さて、今私達は水辺の草原に居る。 パーティメンバーの子──歩行雑草、という種族だそうだ──は、身体の関係上こういった潤いのある場所の方がいいのだろう。 「少しだけ根を張ろうかな」と、嬉しそうな表情で言っていた。 …ちなみに、私は水場が余り好きじゃない。 水自体が嫌いとか、触れたら灰になって流される、とかそういう理由ではない。 泳げないのだ。私は。 なので、万一波に浚われた時の事を考えるとできれば深そうな水場には近づきたくない。 (なお、「遺跡の中の水場で人が浚われる程大きな波が立つのか」「そもそも遺跡の水場にそんな深い場所があるのか」という突っ込みを貰いそうだが全力で却下させてもらう) 浅い水場であれば水浴びなどもできるので嫌いではないのだけど…… ともかく、草原にキャンプを張った。 食料はパンくずと草…というやや心許ないものだが、パンくず自体は比較的大きな袋に入っており「パンくず」というイメージより「作りそこないのパン」という感じだ。 そのパンくずをアルテイシアさんに渡し、調理してもらった。 私自身も調理はできるのだけど、こういう屋外での「野戦料理」は実はやった事が無い。 室内で、それも設備がしっかりと整っている状態でしか料理経験しか無いのだ。 そんな訳で一口大にパンを固めてもらう(余ったものはアルテイシアさんが持っていったようだ)。 パンという食料は、実は短時間での食事にはあまり向いていない。 空気による層で膨らんでいる為水分が必要になる。水分を摂取して…とやると時間が掛かるのだ。 その点、一口大に固めると軽く口に入れて咀嚼・嚥下するだけでOK。実に合理的だ。 この草原には、砂地よりも少ないものの、私達以外にも他の人が結構集まっている。 なんとなく、あたりを見回してみた。 仮面をつけた男の人や、まだ若い少し変わった服装の女の子…色々な人が居る。 とある女の子は「今夜はカレーだ!」と高らかに宣言していた。…カレーって、野戦料理の一つだっけ。 皆で作って食べると美味しい物だ、と聞いたことがある。一度提案してみよう。 そんな中、ひときわ目を引く姿があった。 引き締まった体に勇ましい紋様を描き、そして何より……その、股間から生えた異様なまでに逞しい黒の角。 そんな男の人が、なにやら恐ろしげなダンスを踊っている。 …恐ろしい、というか。ちょっと感想に困るというか。 多分目の前であのダンスを踊られたら私は逃げる。恐れをなして逃げる。それほどの威圧感を秘めたダンスだ。 …敵に回したくはない。むしろ絶対戦いたくない。 できれば、デュエルの相手にはしたくない人だ。恐ろしい。

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