探索手記-4日目-

食料が足りない。 戦闘シミュレーション(別名イメージトレーニング)では幾つか食料を入手できているハズだったのだけど、現実はそうは甘くなかった。 手元には草のサラダが1食分のみ。これを食べたら手持ちの食料が尽きる事になる。 このままでは少々まずい。ヴァンパイアを冠していても、おなかは空くのだ。 かといって、そこらへんを歩いている歩行雑草を捕まえてむしるというのもスマートじゃない。 (どうやらおいしい草は歩行雑草から取れるらしい。…ということは、遺跡外に積まれていたあれもそうなのだろうか) なお、襲い掛かってくる歩行雑草を返り討ちにしてむしるのはどうなんだという突っ込みは例によって却下。 一般的に、ヴァンパイアは血を吸っていれば満足だと思われがちだ。 純粋なヴァンパイアはそうなのかもしれないけれど、私は純粋なものではないので人と同じく食事をしなくてはいけない。 絶食したなら衰弱するし、そうなると魔法の行使もままならなくなる。 それが進むと水すら飲めず、死にそうで死なないという地獄が私を待っているのだ。 (…何故それを知っているのか、という疑問については黙秘する。聞いて楽しい話でもないし) ちなみに、吸血行為そのものは私にとってはただの趣味である。 人で言う飲酒のようなもの、と言えば解りやすいだろうか。 ……とりあえず、誰かに食料を分けてもらう事にしよう。 私達9人の進行状況は、実はそれほど悪くない。 いきなり迷子が出ると言ったトラブルがあったにも関らず、現在先頭集団に近い位置に居る。 もっとも、今回は合流を兼ねて少しの移動に抑えるので恐らく一歩遅れる形になるだろう。 それはそれで悪くはない。開拓していくという楽しみは無くなるけれど、一歩遅れという位置は実は絶好の位置なのだ。 先頭集団が偵察したデータを元に、綿密な計算をすることが可能になる。ここは迷子さんに感謝するべきかもしれない。 戦闘もなかなか悪くはない。 私達9人の戦力をある程度平均化して振り分けているのだけれど、これが上手く機能している。 本来後衛の位置に立つべき人が前衛に立っているのを除けば…だけど。 この辺りは、第二班はモンスターの捕獲次第・私達は私の召喚術次第になる。 第二班はそれ程苦労はしないだろう。今回も歩行雑草を手なづけていた。 問題は私だ。召喚術は精神力を大きく消耗する。 現在の私では、歩行雑草を呼ぶだけでマジックミサイルの詠唱すら危うくなるのだ。 …精神修養が必要だろうか。このあたりに長けていそうな方々に教えを乞う事にしよう。

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